重なる旋律、重ねる声色
群馬県立館林女子高等学校 坂本 将教諭
授業概要
- 対象学年:高校1年生(音楽Ⅰ)
3重唱による「荒野の果てに」の旋律とテクスチュアについて、表現上の効果との関連を意識して歌唱する題材で活用した。再生機能を生かした個人やグループでの学習や、速度や強弱を自分たちの思いや意図に合うように工夫する学習において有効であった。
音楽を形づくっている要素及び音楽に関する用語や記号などについて、音楽における働きと関わらせて理解することにもつながる学習となった。
学習のねらい
(1)曲想と音楽の構造との関わりについて理解するとともに、創意工夫を生かした歌唱表現をするために必要な他者との調和を意識して歌う技能を身に付ける。
(2)旋律とテクスチュアを知覚し、それらの働きを感受しながら、知覚したことと感受したこととの関わりについて考え、どのように歌うかについて表現意図をもつ。
(3)曲想と旋律及びテクスチュアとの関わりに関心をもち、主体的・協働的に歌唱の学習活動に取り組むとともに、音楽に対する感性を高め、音楽を愛好する心情を養う。
学習活動の流れ
旋律とテクスチュアの理解
3重唱のうち、第2声部と第3声部の一部が隠された楽譜を見ながら、まず第1声部と第2声部が一緒に歌われる「重唱」の第2声部を聴き取って楽譜に表す。
その後、第1声部から第3声部までが一緒に歌われる「重唱」の第3声部を聴き取って楽譜に表し、旋律とテクスチュアの特徴を理解する。
譜例1:提示用
楽譜に表したことをまずは自ら歌い、その後に再生機能で確認することで、視唱や読譜を含む歌唱の技能の伸長を図れるようにする。
ある声部をコピーして貼り付け、音の高さを変えることでも各声部の大部分を表せることへの気付きを促し、テクスチュアの理解を深められるようにする。
第1声部に合った第2、第3声部を自分で創作して歌唱する、という創作と歌唱とを関わらせた学習とすることもできる。
担当声部の練習
オーディオ再生のオプションから、初めは自分の担当声部以外の音量をミュートにして練習し、次第に他の声部の音量を上げていき、最後は自分の担当声部の音量をミュートにして歌唱することで、技能を身に付けながら自信をもって歌唱できるようにする。
不安な部分を途中から再生して練習することで、楽譜上で課題を見つけて粘り強く取り組めるようにする。
正確な音の高さを把握するために遅い速度にしたり、担当声部を目立たせるために音色を変えたりといった課題解決の方法を示し、自分なりの学習を試行錯誤できるようにする。
創意工夫を生かした3重唱の歌唱
グループで速度や強弱を設定し、楽譜を用いて表現したいイメージを共有して確かめ、創意工夫して歌唱する。
譜例2:生徒例
速度変化については、♩=〇〇の記号を用いることで、実際に楽譜上で速度を変え、より具体的にその効果を確かめられるように促す。
必要に応じて楽曲全体を移調するなど、自分たちの声域を考慮することを伝え、自分の声の特徴についても客観的に捉えられるようにする。
授業のポイント
歌唱できるようになるために自分で楽譜をつくるという意識をもてるようにすることで、同一の伴奏による一斉指導が中心となりやすい歌唱の学習を、生徒が自分たちで目標到達までの過程を考えて取り組める学習とすることができる。
また、例えば楽譜上では効果的に聴こえるクレッシェンドも、実際の歌唱ではあまり効果的に歌えないなど、発想記号の実際の表現上の効果を学習することにもつながる。
評価方法
提出された楽譜と歌唱との関連から、得た知識を歌唱の技能として活用できているかといった「知識・技能」を評価する。
また、ワークシートへの思いや意図などの創意工夫の記載から「思考・判断・表現」を評価する。そして楽譜の変更履歴を含めて、粘り強く取り組んだり試行錯誤したりしている様子から「主体的に学習に取り組む態度」を評価する。
生徒の反応
楽譜をつくることではなく、歌えるようになるためのツールとして活用したことで、生徒は必要感をもって楽譜をつくったり、音を聴いたりして楽しみながら取り組んでいた。
特に楽譜を途中から再生できることで部分練習を行い、効果的に技能を身に付けようとする様子が見られた。
この課題の作成方法
提示用の楽譜を作成。
課題作成ページで「テンプレート課題」に設定し、1で作成した楽譜をテンプレートに指定。
必要によってオプションを設定し、生徒に配布。
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